2024年から新NISA制度がスタートしました。この記事では投資や新NISAという言葉を聞いたことがあるが投資って何をやればよいか分からないという方向けに記事を書きました。これからの日本ではリスクを取って投資しないと厳しい老後が待っているかもしれません。投資に絶対はありませんが、できる限り損を回避してそこそこのリターンを得られる方法を説明したいと思います。
1 心の準備編:なぜ資産形成が必要か
1.1 老後は年金だけに頼れない! ~老後2000万円問題~
現在、50歳以下の人は自分が65歳となったとしても十分な年金が貰えない可能性が高いです。現在の収入と比較してその40%の額以下しか貰えない可能性があります。給料が月20万円の人なら年金は月8万円以下になるおそれがあります。月8万円ではとても生活できないですよね。年金の減少は深刻な日本の問題です。 日本では高齢化が進んでおり国の労働力人口の減少が年金の減少に直結しています。
2019年、金融庁の報告書において、「夫婦が健康に長生きする場合、公的年金だけでは生活資金が不足し、老後に約2000万円の貯蓄が必要になる」という報告がなされました。この報告は大きな社会的議論を引き起こしましたが、いくら騒いで政府を叩いても年金は増えません。ない袖は振れないのです。我々、自らが自分の老後資金を用意する必要があるのです。
これからの時代、私たち個人が自己責任で資産形成を行い、退職後の生活費を確保するための準備することが求められます。そのための優遇制度として政府がNISAやiDeCoを用意したのでしょう。
1.2 資本主義は資本家に有利
年金の話をしましたが、そもそも、労働者は不利に立場に置かれていることを我々は理解する必要があります。アメリカや日本は資本主義の国です。資本主義は投資家に有利である一方で、労働者には不利な設計になっています。これは資本主義の構造と利益の分配方法や資本家と労働者の力関係に由来します。
資本主義では、資本所有者(投資家)は企業の利益の大部分を得て、労働者はその利益のわずかな部分を賃金として受け取ります。しかも、労働市場の競争、ロボット化、AI化により、労働者は賃下げや不安定な雇用条件に直面せざるを得ません。また、企業や投資家は経済的、政治的に強力な影響力を持つことが多いの対して、労働者は個々の交渉力が弱いため、不利な立場に置かれやすいのです。
それゆえに労働者は一刻も早く資本家側の立場となれるよう、投資家となり株式や債券を所有することが必要なのです。労働者のままでは苦しい生活から脱するのは困難でしょう。
1.3 強制労働からの解放 FIREへの誘い
しかし、株を持つ側に回れば状況は大きく改善します。FIREという言葉はご存じですか?FIREとはFinancial Independence Retire Earlyの略です。FIREは株式投資などにより経済的自立を達成し、早期退職を可能にするライフスタイルのことです。経済的自由とは労働ではなく株式などの資産から入ってくる収入が支出よりも多い状況を言います。
例えば、1億円を持っていたとして株式投資などで4%の収入が得られるとすると、生活費が400万円以下であればFIREの完成です。株式などから毎年資産が4%の収入(400万円)が入ってくるので、出費が400万円以内ならいつまで経っても元々の1億円から減らないのです。
FIREを達成することで、従来型の長い労働生活から解放され、労働のための時間は自分の自由に使うことができます。お金が理由で嫌いな仕事を続ける必要がなくなり、心からやりたい仕事や趣味に専念できます。また、現在の仕事を続けるにしても嫌々の会社の不正に手を貸すこともないでしょう。資産形成を勧め、老後の年金の穴埋めだけでなく、ぜひFIREも目指してみませんか?
2 実践編:これだけやればOK
投資で資産形成を目指したい方の中で、投資は難しいと思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、そこそこの利益(年5~8%の利益)で良ければ投資は難しくありません。やることは単純です。以下を実施するだけです。
詳細を順に説明していきます。
2.1 生活防衛資金と投資の種銭を貯めよう
最初にやるべきはお金を貯めることです。ただ、お金が貯まってもすぐに投資してはいけません。投資はごく短期間ではマイナスになる可能性が十分にあるからです。そのため、1年程度の生活費は、投資資金とは分けて別に用意しておく必要があります。このお金を生活防衛資金といいます。生活防衛資金として、月の生活費が15万円ならば、15万円×12か月=180万円は貯めたいおきたいところです。生活防衛資金を貯める理由は、リストラなどにあって収入がないときに投資がマイナスだと生活に支障をきたしてしまうためです。最悪の状況も想定しておきましょう。生活防衛資金より多く貯まったお金を投資資金として投資に回していきます。
生活防衛資金や投資資金を効率よく貯めるには給料から天引きの「積み立て貯金」がかなり有効です。できれば給料の20%、最低でも10%は積み立て貯金に回したいところ。手取り20万円ならば4万円の貯金が目標です。
また、お金を貯めるのを加速するために、天引き貯金と並行して節約も実施します。どのような節約できるか、自分の生活スタイルを見直してみるのが良いでしょう。日々の生活費の中で節約できるものがないかリストアップしてみましょう。節約術の一例には「格安SIMの利用」、「不要な保険の解約」、「維持費のかかる車の売却」などが挙げられます。毎月の大きな固定費を削減していくのが節約による貯蓄増のコツです。
2.2 証券口座を開設しNISA口座を設定しよう
生活防衛資金を貯め始めたら証券口座も開いておきましょう。証券口座は株式などの売買するために利用されます。証券口座にお金を預けることによって株式、債券、投資信託などを買うことができます。
証券といえば野村證券など実店舗がある証券会社を想像される方も多いと思いますが、開くべき証券口座はネット証券一択です。実店舗がある証券会社は手数料が高い可能性があるので避けておいたほうが無難です。最初に開く口座は楽天証券が良いでしょう。SBI証券もおすすめですが、画面操作がちょっと難しいので最初は戸惑うかもしれません。
楽天証券やSBI証券のネット証券の口座はインターネットから申し込みすることができます。申し込みには本人確認書類、マイナンバー確認書類、利用する銀行(普通預金)の口座です。銀行は色々な銀行が選択できますが、それぞれの証券会社に対応するネット銀行も一緒に申し込んでおくと便利です。楽天証券なら「楽天銀行」、SBI証券なら「SBI証券NEOBANK」です。
証券口座を開くときに特定口座の他に「NISA口座」も一緒に開設します。NISAは口座内の株やファンド(投資信託)の配当や値上がり益にかかる税金を免除してくれるお得な制度です。なお、特定口座では得られた利益に対して20.315%の税金がかかってしまいます。
2.3 インデックスファンド(投資信託)を買おう
ネットの証券会社で買うべき金融商品はインデックスファンド(投資信託)です。インデックスファンドのなかでも全米株式か全世界株式のインデックスファンドが良いでしょう。おすすめのインデックスファンドのリストを挙げておきます。
買うべきインデックスファンドのリスト
- 全米株式
- 全世界株式
インデックスというのは株価指数に連動するファンドです。株価指数にはTOPIXや日経平均、S&P500、ナスダック100などがあります。これらの言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか?この株価指数と連動して値動きするものをインデックスファンドを言います。インデックスファンドを含めファンドの説明は以下です。
このインデックスファンドを生活防衛資金以外の投資用資金で買っていきます。買うタイミングはお金が出来次第で良いです。株価が安い時に買うのが効率的だと思われるかもしれませんが、安い時を狙って買うのは簡単ではありません。できるだけ早く投資資金を投じたほうが良い結果に繋がりやすいでしょう。
これらのインデックスファンドはNISA口座を利用して買っていきましょう。NISA口座は成長投資枠と積み立て投資枠がありますが、どちらの枠も同じインデックスファンドを買っていきます。特定口座は税金がかかる口座なので基本的には使いません。NISA口座で買える枠(年間360万円×5年)をすべて使い切ってから使うようにします。
2.4 暴落がしても売らない。必要な金額になるまで投資し続けよう
インデックスファンドの投資を行うと10数年に一回程度、価額が大きく下落することがあります。ここで不安になってしまい持っているインデックスファンドを売ってしまうと大きな資産形成は期待できません。このような状況ではじっと我慢することがとても大事なります。
大きく下落するときは投資資産が半分になってしまう可能性もあります。ですから、投資する前に、資産が半分になっても心が耐えうるか考えましょう。もし、暴落に耐えられないと思ったなら投資金額の減額を検討しましょう。投資できるお金をインデックスファンド100%で積み立てるのではなく、現金を厚くして貯めていくのも立派な投資戦略です。
暴落対策ができたなら、あとは自分が必要だと思う金額まで投資を続けていきます。老後資金のためなら2000万円がひとつの目安になるでしょう。
最後に資産形成のための3か条を書いておきます。
- 分散投資 ⇒ 個別株ではなくてインデックスファンドを選択
- 低コスト ⇒ アクティブファンドではなくインデックスファンドを選択
- 長期投資 ⇒ 10年超を見越した投資を。すぐに利確しない、暴落時に売らない。
3 理論編:ファンドの握力を強化する
資産形成にはインデックスファンドが最適です。ここではなぜインデックスファンドが適切なのか現代ポーフォリオ理論から説明します。また、長期の資産形成で障害となる人間の心理状態についてプロスペクト理論を説明します。
3.1 現代ポートフォリオ理論
インデックス投資の基礎となる理論です。ここではインデックスファンドがベストな投資先であることを説明します。
3.2 効率的市場仮説
アクティブ投資はインデックス投資によるパッシブ投資になぜ勝てないのか?
3.3 プロペクト理論
人間は「小さく勝って大きく負ける」という性質があります。プロスペクト理論はこれを説明する理論です。プロスペクト理論を学んで心の誘惑に負けない投資を目指しましょう。
4 Q&A:よくある質問
4.1 いまから買っても遅くないですか?株の暴落が心配!円高が心配。
世界経済は成長し続けています。ときには経済危機が発生して経済規模が縮小するときもありますが基本的には右肩上がりで成長します。この理由から株の買い時は常に今なのです。株価が下がってから買うという方法も考えつきますが、株価は短期では予想できないものと考えたほうが良いでしょう。同様にいつ暴落するかも予想できません。予想できるのであればだれもが億万長者なることができるからです。我々にできるのは株を買って世界経済の成長を信じて買い持ちし続けることです。
また、世界に投資することから、これから円高になるのではと心配する方もいます。しかし、為替は短期では予想できるものではありません。これから円高になる可能性もあれば、これから円安になる可能性もあります。予想不可能なものとし為替を気にせず淡々とファンドを購入すべきです。
4.2 ドルコスト平均法と一括投資のどちらがいいですか?
理論的には一括投資が良いとされています。早めに資金を投資したほうが多くリターンを受け取れるとされています。ドルコスト平均法は暴落時に安く買えるというメリットがありますが万能ではありません。ドルコスト平均法で貯め終えた直後の暴落すると、これは一括投資した直後に暴落するのと同じ結果です。
ただ、理論的に一括投資が有利であっても、投資を初めて始める方であれば、ドルコスト平均法で少額からスタートすることをお勧めします。大金を一括投資しては夜も眠れないでしょう。まずは株式投資に少しずつ慣れていくことが大事だと考えます。心の安定も投資には大事な要素です。
4.3 特定口座を解約してNISA口座に移した方が良いですか?
NISA口座に移したほうが良いでしょう。ただし、今後、追加投資してNISA口座に投資していくのであればそれでも問題ないでしょう。
4.4 インド株はどうですか?
お楽しみ枠として投資するのはありでしょう。投資金額は全投資額のせいぜい10%以内です。インド人口が2023年には世界一になると言われており、人口ボーナスから高い成長率が期待できます。ただ、期待が大きい分、株価も割高です。また、株価は経済成長と直接連動していないのでその点も注意が必要です。また、インドの通貨であるルピーは円に対して安くなり続けているため、株価が上がっても円建てではそれほど儲けが上がらない可能性があります。
4.5 どの位の額を投資すればいいですか?
リスク許容度によります。どの位損をしても大丈夫かが1つの目安となると思います。暴落したときに資産が半分になる可能性があるので、これに耐えられる額を投資します。
もう1つの考え方として、資産の比率で考えても良いでしょう。現金と株式の比率を50%づつで持つなどの方法です。この方法の場合、一年に一回程度この比率に戻るようにリバランスします。リバランスによって、株式がバブル状態のときは株式を売って利益確定できますし、株式の比率が下がった場合は現金を使って安くなった株式を買い付けすることができます。
4.6 全米株式と全世界株式のどちらがいいですか?
好みで選んで大丈夫でしょう。アメリカの経済に今後陰りがくるかもしれないと心配する方は全世界株式が良いでしょう。アメリカの企業は世界中にあるので世界経済の発展を米国だけで実現できると考えるのなら全米株式でも良いでしょう。
全米株式と全世界株式を半分ずつ買うのも手ですが理論上においてはお勧めできません。リスクが高くなるおそれがあります。ただ、実運用上はわずかな差ですのであまり気にすることはありません。半分ずつ買っても90点の投資が88点位になるだけです。両方買いたい人は両方買ってもOKです。
4.7 レバナスをいかがでしょうか?
お勧めしません。レバナスはナスダック100と呼ばれる指数に対して日々の価格変動が2倍となるように設計された投資信託です。お勧めしない理由は、レバレッジ商品はリスクが高く暴落時にレバナスの含み損に耐えられなくなる可能性があるからです。株式投資で一番やってはいけないことは暴落時に株を手放してしまうことです。これでは損だけが残ります。暴落時は耐えて株価の上昇を待つ必要があるのですが、暴落に心が負けて売ってしまう可能性があります。レバナスは上級者向けの商品であり、そして長期で買い持ちするには向かないことは覚えておきましょう。
4.8 債券にも投資したほうがいいでしょうか?
債券も魅力的な投資対象だと考えています。株式がメインですがポートフォリオの価格変動をマイルドにするために債券投資も考えてみましょう。
4.9 iDeCo(イデコ)はいかがでしょうか?
iDeCoとは個人型確定拠出年金で自分が拠出した掛金を、自分で運用して資産を形成する年金制度です。老後資金にぜひ活用したいところです。iDeCoの掛け金は所得から控除されるため、所得税と住民税の減税がひとつめのメリットです。ふたつめはiDeCoで運用された金融商品の値上がり益は非課税です。
注意点も2つあります。ひとつめは原則60歳までは引き出すことができないことです。結婚、自宅の購入、子供の進学等で急な出費があったときに取り崩すことができないことに注意する必要があります。ふたつめの注意点は、最後に老後資金として引き出す時に課税される可能性があることです。退職金控除を利用して非課税にすることですが、会社の退職金がある場合は控除の限度額を超えてしまう可能性があります。年金として受け取る方法もありますが年金額に応じて課税されてしまいます。有利に受けとれるように対策を考えておく必要があります。
4.10 高配当投資はいかがでしょうか
資産を崩して現金化するインデックス投資とは異なり、配当金という別途の収入がある高配当株投資は人気の投資法です。しかし、取れるリスクが同じ場合はインデックス投資のほうが高いリターンが得られる可能性が高いため、どちらがよいかと問われた場合はインデックス投資と答えます。どうしても配当金が欲しければ大手のネット証券では定期取り崩しサービスがあるので、インデックスファンドを取り崩したお金で配当金を代替するのが良いでしょう。
4.11 タイミングを見て投資したほうが良いでしょうか?
投資資金があるなら今投資しましょう。投資の専門ではない我々が株価の上がり下がりを予測するのは無理です。投資の専門家であっても投資タイミングを当てることは相当困難なはずです。経済の専門家が年初に本年の株価予想などを行いますが、この予想はほとんど当たりません。この事実は株価予想の困難さを物語っています。
株式投資には効率的市場仮説と呼ばれる仮説があります。効率的市場仮説については以下のブログを参照してください。この仮説に従えば、現在の株価は割安でも割高でもないとされています。つまり、現在の株価は適正価格なのです。この効率的市場仮説は実際の株式市場でも概ね正しいと経済学者は考えています。我々は株価がこの先どう動くかはランダムと考えるべきなのです。この理由から為替レートや株式の割安割高などは気にせずに、我々は株式を淡々と買うべきです。